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THE ENDLESS PURSUIT

プロトタイプからプロV1誕生までのストーリー
エリック・ソーダーストロム

10月の最終日、午前7時過ぎ、華やかなラスベガス・ストリップから24kmほど西。朝日は遠い山々を浮き上がらせているが、まだTPCサマーリンのゴルフ練習場には届かない。涼しくて静かな、いつものPGAツアーの月曜日。ゴルフカートのエンジン音を背景に、5人のトーナメントボランティアがめいめいの思い出話を語る。ここシュライナーズ・ホスピタルズ・フォー・チルドレン・オープンは、長年、数々の名場面の舞台となってきた。

彼らは、この1週間、練習場の端に設置したテントで過ごし、練習用ボールを配布しながら、思い出話のネタをため込む。

誰もウォーリーを探すつもりはないのに、お馴染みの赤と白の帽子とシャツ、ブルーのパンツ、瓶底メガネの彼が練習場を歩いてくる。続いてペンギン男、そしてコメディアンのウィル・フェレルが演じるキャラクターの仮装をした3人。PGAツアーで一番のお祭り騒ぎであることは間違いない。

それでも1日は始まったばかり。後になって、ボランティアの1人が「今日がハロウィンだということを忘れていた」というほどだ。

「私たちにとって、このプロセスに始まりも終わりもない」

タイトリストゴルフボール研究開発 上席副社長 ビル・モーガン

その頃、TPCサマーリンのクラブハウスでは、選手用ロッカールームの裏で、タイトリストツアー担当のトッド・ハリスが、白いテープで封をした段ボール箱の山に囲まれていた。ポケットから小さなナイフを出して箱を1つ開けると、1ダースのゴルフボールが入ったシンプルな白い箱。ハロウィンの仮装のような華々しさはないが、「いいもの」が詰まっている。

地味ではあるが、これが2017年モデルのタイトリスト プロV1・プロV1xのPGAツアー公式デビューである。誰よりも先に新しいゴルフボールでプレーしたいと思っているツアー選手にとってのクリスマスは、12月25日ではなく、10月31日かもしれない。

しかし、このクリスマスは2年に1度しかやってこない。そして、人によって異なる意味を持つ。アメリカの東海岸、マサチューセッツ州フェアヘブンに本社を置くアクシネット・カンパニーでは、タイトリストゴルフボール研究開発の上席副社長、ビル・モーガンが、数名のメンバーと共にオフィスで2019年もしくは2021年に向けた新しい開発の可能性について話し合っていた。

「私たちにとって、このプロセスに始まりも終わりもない。2015年から取り組んできたことが、次の製品に反映されるかされないか、正直わからないが、わかったら知らせるよ。」とモーガンは語る。

WHITE BOX TESTING

ホワイトボックステスト

TPCサマーリンのロッカールームに続くドアが開く。ビリー・ホーシェルがスーツケースを引き、サングラスを襟元にぶら下げて、すれ違う人たちに挨拶をする。自分の名前のロッカーを見つけ、扉を開く。中には、数本のハンガーとフットジョイのゴルフシューズの箱が1つに、背面パネルに立てかけられたパターが1本。そして、中段の棚にはゴルフボールの白い箱が2つ。

トッド・ハリスが歩きながら折りたたんだ紙に手早くメモをしていると、ホーシェルが近づいてきた。今日は挨拶抜きだ。

「黒い三角はどっち? こっちが黒い三角だと言ってくれ」とホーシェル。

8カ月前、ドラルで行われたWGCキャデラック選手権の練習ラウンド。ホーシェルはただ黒い四角形だけがプリントされたボールでセットアップした。近くには、黒い三角形が入ったボール。ゴルフボール研究開発チームのツアーコンサルタント、フォーディー・ピッツが、白い箱を数箱、小脇に抱えて見守る中、ホーシェルは3番フェアウェイの空に黒い四角印のボールを放った。次に黒い三角印のボールを5番アイアンで転がして位置につけ、打つ。ホーシェルはピッツを待ってからフェアウェイを歩き始めた。2人がグリーンから35ヤードほどのところで止まると、ピッツが2つのゴルフボールを地面に置く。1つは黒い四角印、1つは黒い三角印。ピッツはそれぞれのボールでアプローチショットを打ってほしいと頼み、もう2、3個渡す。こうして数ホール、ホーシェルは2種類のプロトタイプでさまざまなショットを続けて打ち、ピッツに飛距離、弾道、スピン、打感といった性能についてのフィードバックを行った。

2016年前半の7カ月、ピッツと同僚のジェフ・ベイヤーズはこのようにして、月、火、水曜に何度もツアープロと組み、PGAツアー練習ラウンドでプロトタイプのテストを行ってきた。ボールのほとんどには、黒、グレー、白の四角印または三角印しか記されていない。

同じ頃、タイトリストゴルフボールプロダクトマネジメントのシニアマネジャー、フレドリック・ワデルは、12,000人を超えるTEAM TITLEIST会員に異なる6種類のプロトタイプを送付し、ダブルブラインドテストを実施した。熱心なゴルファーやブランドファンに、ツアーでテストしたのと同じ、白い箱に入った四角印と三角印のボールを送り、2つのゴルフボールを同時にテストする方法を指示する。受け取った会員たちがオンラインアンケートでそのパフォーマンスの結果や感想を答える仕組みだ。

あるTEAM TITLEIST会員はアンケートの最後に、こう書いていた。「ロストボールになるまで、どちらのボールも使った。どちらもすばらしかったが、特に三角印のボールは、今まで打ってきた中で最高のボールだった。フックしてOBになったボールを探したけれど見つからなかった。あとで、(私が最後のプレーヤーだったので)ラウンド後に、ボールを探しに戻ると見つかり、翌日のティーショットで使うと、スコア68が出た。このボールを発売してくれるならとても嬉しい。発売されないのであれば、現時点のタイトリストのボールで最も近いものを教えてほしい」

「三角印のボールは、今まで打ってきた中で最高のボールだった」

TEAM TITLEIST会員

四角と三角の印を付けたプロトタイプのテストが、ジミー・ウォーカーによって初めて行われたのは、2016年ファーマーズ・インシュランス・オープンの開催期間中、カリフォルニア州オーシャンサイドにあるタイトリスト・パフォーマンス・インスティチュートだった。

2月にはアダム・スコットも同施設を訪れ、このプロトタイプのテストを1時間以上も行った。ドライビングレンジでトラックマンを使ってドライバー、アイアンショットを計測したのち、ショートゲームエリアに移動。スコットいわく「全力のウェッジショット」(Vokey Design SM6 ロフト角54°で95ヤード)を打ち上げると、その後は50〜60ヤードのアプローチショットを試した。

ウェイストマネジメント・フェニックスオープンでの練習ラウンド中、TPCスコッツデールのスタジアムコース、2番ホールのフェアウェイの真ん中に立ち、リッキー・ファウラーに四角印と三角印のボールを渡すピッツに、ファンたちは野次と質問を浴びせた。

ドラルでほんの数ホールだけテストした後、ケビン・キスナーは、白い三角印が入ったボールの虜になった。「それから数カ月もの間、誰かが僕のそばに来ては『三角、三角、三角!』と言うんだ。振り向けばケビンがいて、『フォーディー、いつになればあの三角のボールでプレーができるの?』って」。

「2017年プロV1プロトタイプ」と題した2016年3月9日付けの内部資料「アクシネット・カンパニー研究開発 テスト結果」には、キスナーのフィードバックの要約が掲載された。「あの三角印のボールはすばらしい飛びで、飛距離が長い! 自分のボールよりも20ヤードも伸びたと思う。また、アイアンで打った打感も良く、ボールの密着感を感じる。最高だ。パー3のホール(4番ホール)でミスヒットして、池ポチャしてもおかしくなかったが、遠くへ飛ばせたため免れた。三角印のボールが気に入った」

ザ・プレーヤーズ・チャンピオンシップでは、ジョーダン・スピースが初めて初期のプロトタイプと対面した。スピースは、TPCソーグラスの2~4番ホールをピッツと歩き、黒い四角と黒い三角でテストした。

「研究開発チームがとても熱心に会場に出向いてくれるから、僕はとてもラッキーだと思う」

ジョーダン・スピース

プロトタイプのテストプロセスについて、スピースはこう語っている。「とても貴重な体験。時間がかかるけれど、みんな忍耐強い。大会の練習ラウンドだから、ツアークオリティのコースでツアーのコンディションで打てて、ドライバー、アイアン、ウェッジショットによる飛びの違いも確認できる。こんな体験は家ではなかなかできない。研究開発チームがとても熱心に会場に出向いて、ツアー大会の練習ラウンドで僕たちに試打をさせてくれるから、数ホールを無駄にするとはいえ、僕はとてもラッキーだと思う。みんな本当にすごく助かっているし、タイトリストの役にも立つと思う」

6カ月後、初めて2017年モデルのプロV1xを使って試合に臨んだスピースはオーストラリアオープンで優勝。続いて行われた試合は3大会連続でトップ10入りを果たし、AT&Tペブルビーチ・プロアマでも優勝した。結果、黒い三角印のボールは、2017年プロV1xの近縁となったのだ。

ビリー・ホーシェルにとって嬉しいニュースだ。

DIRECT FEEDBACK

直接のフィードバック

TPCリバーハイランズの1番ティーから15ヤードほど歩き、クラブハウスの裏口から入る最下階。2015年トラベラーズ選手権の火曜日、その角部屋で、タイトリストゴルフボール研究開発チームのスタッフたちは、ミネラルウォーターのペットボトル、発泡スチロールのコーヒーカップ、ノートやペンが散乱したテーブルの周りでPGAのツアー選手とゴルフボールについて話し合っていた。特にプロV1とプロV1xについてだ。その様子をビデオカメラが撮影している。

2015年モデルのプロV1・プロV1xが誕生してまだ6カ月しか経っていなかったその年の夏、タイトリスト研究開発チームは、PGAツアー、ヨーロッパ、LPGA、Web.com、チャンピオンツアーの選手たちのほか、アマチュアゴルファー、TEAM TITLEIST会員など、100名以上のフォーカスグループインタビューを50時間以上撮り貯めた。参加者は、メジャーチャンピオンから2桁のハンディキャップを持つゴルファーまで幅広い。

コネチカット州での火曜日、少なくとも、ゴルフボール研究開発チームのプロジェクトマネジャーであるダグ・ジョーンズにとって、忘れられない特別な瞬間があった。ジョーンズは、タイトリストで20年以上ツアー用のゴルフボールを開発してきた人物だ。

トロイ・メリット、ザック・ブレア、ルーク・ガスリーと午後のセッションをしていたときのこと、研究開発チームの製品ラインディレクターであるマット・ホッジがこんな質問をした。「今、自分が使っているゴルフボールを改良できるとしたら、どんなボールが欲しい?」

メリットが即座に「もっとバーディーを出せるボールがいいね」と答えると、ブレアが頷きながら、クスクスと笑った。

「今、自分が使っているゴルフボールを改良できるとしたら、どんなボールが欲しい?」

製品ラインディレクター マット・ホッジ

メリットは続けた。「本当にこのボール(2015年モデルのプロV1)を気に入っている。飛距離はそれほど重要じゃない。僕はパワープレーヤーではないから、自分の強みを生かす。つまり、グリーン周りやアップダウンをうまくこなす。ここ数日間で、何コースかプレーしてきたけど、ティーショットで5ヤード伸びた。でも、20ヤードの伸びなんて求めないし、僕には無理だ。飛距離は少し伸びればいい。でも、アイアンやウェッジショットの打感、飛び、ノックダウンショットを犠牲にしたくないんだ…」

ホッジ「何も犠牲にすることなく5ヤードだけ伸びれば満足ということ?」

メリット「5ヤードの飛距離アップ、そうだね。それで他の犠牲を払わず、フェアウェイに留まることができるなら、最高だね」

その日の夕方遅く、マサチューセッツ州に向かう車に乗っていたジョーンズは、仮説に近いある考えを思いつき、数分間の沈黙を破った。「マット、俺たちは犠牲なしで数ヤードの飛距離アップを実現できるんじゃないかな」

ジョーンズは、新しいコアの開発に携わっていた。仮テストでは、スピン量の低減とボールスピードの向上という、通常では同時に実現できないこの2点の改良を行っていた。

ホッジいわく、「タイトリストのフォーカスグループインタビューや国内で開催しているタイトリストのボールのフィッティングイベント、TEAM TITLEIST会員への数々のアンケートに関わらず、『少しだけ飛距離を伸ばしたいが、このままプロV1を使いたい。この打感やグリーン周りのパフォーマンスが好きだし、まさに思い描いた弾道を実現できる』とプロV1についてゴルファーから同じことを耳にするようになった。もし、これらのことをキープしながら、例えばプロV1xほどの飛距離を出すことができれば、まさに完璧だね」

「単純な考えだ。飛距離を伸ばしたくない人なんていない。でも、ただ伸ばしたいのと、犠牲なしで伸ばしたいのでは、昼と夜ほど違いがある。もっと遠くへ飛ばしたいという目標だけなら簡単だが、他のパフォーマンス特性を損なわずに飛ばすとなると、話が複雑になる。嬉しいことに、俺たちはすでにダグが言っていたことを裏付けるテスト結果を出している。それこそが、次のステップで取り組むべきことだったんだ」

「かつてない飛距離を出せた」

アダム・スコット

それから約1年3カ月が経った2016年オーストラリアオープンの前の週に、アダム・スコットがオーストラリアのゴールドコーストにある自宅へ帰ってきた。そこには2017年モデルのプロV1の最終プロトタイプが届いており、スコットの帰りを待っていた。サンクチュアリー・コーブ・ゴルフ&カントリークラブで午後のラウンドを行い、1週間かけてプロV1をテストした。翌週木曜日、オーストラリアオープンの1番ホール、スコットがティーアップしたのは2017年モデルのプロV1だった。

その週、スコットはこう語った。「NEW プロV1ですごいのは、その飛距離だと思う。かつてない飛距離を出せたのに、打感がソフトなんだ。まるで、僕が小さい頃に使っていたバラタボールみたいに驚くほど柔らかい。グリーン周りでは僕の場合、打音や快適性がとても大切なんだ。カチンという音がなく、クラブのフェイスに溶け込むようなソフトな打感があるね」

BUILDING TRUST

築き上げた信頼

2015年夏、ゴルフボール研究開発チームが行ったほとんどのフォーカスグループインタビューは、3~5名のゴルファーで構成され、せいぜい1時間で終了していた。しかし、TPCリバーハイランズでは、パドレイグ・ハリントンが70分を超えて熱弁を振るい、ゴルフボールとプレーヤーのパフォーマンスに関する中身の濃い、印象的な内容となった。

3度のメジャーチャンピオンを経験しているハリントンは全く臆することなく、その日、彼の周りに座っていたゴルフボールメーカーの人たちと同じように、揺るぎない向上心と最適なパフォーマンスの追求に興味を抱いている。

ハリントンが話の中で20分話したことは、「みんなそれぞれのスタイルでゴルフボールを打っているけど、なぜそうしているのかを知りたい」という内容だった。「ツアーにはあまりに多くのプレーヤーがいて名前を挙げるのは難しいし、彼らのヘッドスピードやボール初速なんかを語ることなんてできないけど…。どうすれば飛距離が伸びたり伸びなかったりするのか知りたい。例えば、自分より飛ばしている人を見かけたら、それはその人本来のヘッドスピードで打ってそうなったのか、何かしら効率的な要素があるのかを知りたいんだ」

「前にこの話をしたことがあったかな…」

パドレイグ・ハリントン

25分後、ハリントンはテーブルに両手をついて身を乗り出し、30分近くひたすら専門的な話を行きつ戻りつ話していたのを中断した。もし動画をじっくり見返してみたら、ハリントンの頭に記憶がよみがえった瞬間が見えるかもしれない。ハリントンはニコリと笑って「前にこの話をしたことがあったかな…」と切り出した。

カーヌスティで開催された2007年の全英オープン最終日の夕方、ハリントンとセルヒオ・ガルシアの対決が明らかになった頃、ハリントンのキャディーであるロナン・フラッドの鼓動はどんどん速くなっていた。6球のプロV1xを託した父親が見当たらないのだ。

その日の朝、フラッドはハリントンのバッグをできる限り軽くしようと、計4ホールのプレーオフに備えて用意した6球の予備ボールをギャラリーにいる自分の父親に預けていた。「確かに当然の行動だ」とハリントンは言う。

しかし、約5時間後、ボールを取りに行こうとしたフラッドは、コースに戻ってティー近くの場所を早く確保しようとする観客の渦に巻き込まれ、どうにも父親を見つけられなかった。

ハリントンは、この混雑の中、マネジャーのエイドリアン・ミッチェルをカーヌスティのプロショップへ向かわせた。店を出たミッチェルの手には、3球入りのプロV1xが2箱あった。ハリントンは「おそらく、タイトリストのいい点は、ツアー仕様のボールを店で買えることだ。全英オープンのプレーオフ1ホール目のティーショットは、カーヌスティのロゴが入ったタイトリストプロV1xを使うことになった」と語った。

その後すぐに、フラッドは父親を見つけた。4ホール終了後、ハリントンは、優勝トロフィー「クラレットジャグ」を手にした。今や、その6球のボールは記念となっている。

「この話は、まさにタイトリストブランドの本質を表している。品質の均一性と性能の同時実現。ゴルファーが新しいゴルフボールでティーショットのときに最も心配したくないことは、前に使っていたボールと同じパフォーマンスをしてくれるかどうかにある」と、1年後、録画したインタビュー映像を見直しながらワデルは言う。

X-RAY VISION

優れた透視眼

マサチューセッツ州ノースダートマス、6号線すぐの慌ただしいビジネス街の真ん中にあるカントリークラブ・オブ・ニューベッドフォードは、ドナルド・ロスが設計したクラシックなゴルフ場で、中が見える金網のフェンスで囲まれている。車でタイトリストのボールプラントIIIから15分ほど場所なので、工場に向かう途中にも簡単に見つけることができる。

1930年のとある日曜日のカントリークラブ・オブ・ニューベッドフォード。その近所にある精密成形ゴム会社「アクシネット・プロセス・カンパニー」のオーナーであるフィル・ヤングは、最終ホールでショートパットをミスし、試合に負けた。熱心なアマチュアゴルファーであるヤングは、その日、ブレるうえに戸惑うような結果のスイングを連発したのだが、次第に問題はスイングにあるわけではないことを確信した。ラウンド終了後、ヤングは一緒にプレーした仲間、ボナー医師にクラブハウスで、何度となく問題は自分のゴルフボールにあると言った。ヤングのゴルフボールがどこか変だったのだ。

そこで2人は、そのゴルフボールをカントリークラブ・オブ・ニューベッドフォードから5kmも離れていないセントルーク病院に持ち込んだ。都合のいいことに、ボナーはそこのレントゲン科長だったのだ。病院に着いてヤングのボールをレントゲンにかけると、ボールのコアが明らかに中心にはないことがわかった。構造上のミスであり、それが不規則に飛んだり、グリーン上のパットでラインを外したりする原因と考えられた。その日の夕方、2人はカントリークラブ・オブ・ニューベッドフォードのプロショップで販売されている他の数多くのブランドのボールを購入して病院に持ち帰り、レントゲンにかけたところ、同じような結果が出た。ボールのコアは中心からずれてきれいな円状ではなく、個体差もあり均一性に欠けていたのだ。

ヤングのゴルフボールがどこか変だった。そこで2人はボールを病院に持ち込んだ。

時代は大恐慌に突入し、ボビー・ジョーンズのグランドスラム達成に沸く頃、ゴルフボールは可能な限りいいものでなければならないという意見が広がり、ヤングはゴルフボール事業に参入することを決意する。マサチューセッツ工科大学時代の友人で、すでに何年かゴルフボール製造の経験を持つ化学技術者のフレッド・ボマーを新事業に加わるよう説得した。

タイトリスト ゴルフボールオペレーション 上席副社長のビル・フライはこう語る。「フィル・ヤングは、より良い設計と製造工程を導入することで、ゴルフボールのパフォーマンスと品質の基準を作ることができるとわかっていた。最先端のイノベーションと優れた製造工程という価値は、この80年間、タイトリストのスタッフとプロセスの刺激となり、原動力となっている」

ゴルフボールの進化とパフォーマンスに革命をもたらしたタイトリスト初のゴルフボールは、1935年に誕生した。当時のゴルフボールは、ソリッドもしくはリキッドの中心部に糸ゴムを巻き付けたコア、さらにそれをカバーで覆った3層構造だった。タイトリストの新しいボールは、市場に出ている他のボールよりも約40%小型化したリキッドの中心部を採用し、その結果、非常に大きなコアを作ることに成功した。

このコアの製作にあたり、ヤングとボマーは、糸巻きのコアとカバーの間を高圧縮で高い粘着力にするため、特許取得の糸ゴムと巻き方を採用した。また、中心部のリキッドを凍らせて、巻き工程で完璧な円状を保つという、のちに何十年も引き継がれることになる新しい製法を紹介した。これにより、よりきつく糸を巻くことができ、かつてない最速のゴルフボールエンジンを生み出したのである。

工程の最後に、X線にかけて行う品質管理検査は、ヤングの理念に基づくもので、今日も実践されている。すべてのプロV1・プロV1xが1球1球、箱詰めする前にX線にかけられている。工程全体で行われる90種類以上もの製品・工程の品質検査(デュアルコアのプロV1xにおいては120種類の検査)に合格したボールだけが、均一な性能を備えたゴルフボールと認められ、PGAツアーのロッカールームやカントリークラブ・オブ・ニューベッドフォードのプロショップへ届けられた。

「フィル・ヤングの使命は、世界一のゴルフボールを作ることにあった。ヤングは、それを実現する場所として、ここ、ニューベッドフォードを選び、その労働力や強い労働倫理、献身と共に目的を達成してきた。タイトリスト社員が85年前に示したその姿勢は、今日にも受け継がれている。」とタイトリスト ゴルフボール製造ディレクターのダン・ジェンドリューは語る。

ボールプラントIIIの責任者であるジェンドリューは、タイトリストに入社して30年を迎える。その勤務年数はすばらしくもあり、当然とも言える。

ジェンドリューいわく、「何年もの間、タイトリストが競合と一線を画して成功を収めることができているのは、我々がタイトリスト所有の工場で、タイトリスト社員の手によって、タイトリストの仕様に沿って、タイトリストゴルフボールを作っていることに尽きると思う。特に、アクシネット・カンパニーで働いていた世代から受け継いだゴルフボール製造の知識という財産の大切さは、言葉では言い尽くせない。このニューベッドフォード周辺地域でいえば、平均勤務年数は21年以上になる」

最年長になるジェンドリューの2人の同僚は、1965年にタイトリストに入社している。(つまり、勤続52年ということになる)その内の1人、ダイアン・メデイロスは、タイトリストで働き始めた最初の35年間は糸巻きボールの製造に携わっていた。そして今は、プロV1を作っている。

BUILDING BETTER

より良いものを築く

タイトリストゴルフボール研究開発部門は、本社の1階にある。機密保持の観点から、特別な資格のある人しかアクセスは許されない。都合がいいことに、迷子になりやすい場所でもある。一見すると、個室やパーテーション、給水器、コーヒーメーカーなどがある一般的なオフィス構えに見える。しかし、角を曲がれば、素敵なオールドパブのような雰囲気に変わり、隅々まで驚きに包まれている。どの部屋も何の部屋か想像できない。

それはまるで、ドラマ『CSI:科学捜査班』のセットのような化学研究室だ。ゴルフボール製造マシンやNASAかと思うような機械に溢れ、小規模なタイトリストのボール工場として機能している部屋がたくさんある。ゴルフボール製造マシンだけでなく、ボールのテストを行う機械(「ブラック・ウィドー」の愛称で知られるタイトリストの新しいショートゲームロボットなど)も作り、メンテナンスをする技術者がいるマシンショップ、そして、高速で繰り返し金属板に向かって打ちつけられるゴルフボールの音が聞こえないよう、耳栓が必要不可欠な耐久テスト部屋などである。ケージに囲まれた打席の中には、研究開発部門が作ったとは思えない高性能のロボットゴルファーとローンチモニターが備えられている。さらに、ローンチモニターが確実に正しくデータを読み込むようにするための装置もゼロから作られたものだ。

「真に目に見える進化をもたらすことができなければ、私たちはどんな製品も発表しない」

製品ラインディレクター マット・ホッジ

どこもかしこもゴルフボールだらけだ。ゴルフボールのパーツに素材に、スタッフまで。タイトリストゴルフボール研究開発部門は約80名のスタッフで構成される。化学技術者、数学者、物質科学者、物理学者、それに、文字通りロケット科学者もいる。

ダートマス大学(技術管理学)とペンシルベニア州立大学(応用統計学)で修士号を取っているマイク・マッドソンは、この部門のエアロダイナミクス&ツーリング(空気力学&機械)担当のシニアエンジニアである。マッドソンの職場の横を通ると、研究開発工程の全貌の一端を垣間見ることができる。

壁には、ゴルフボールのディンプルパターンをプリントアウトしたものが、少なくとも12種類は画鋲で留められている。どのパターンも、すべてのディンプルが色分けされており、全体的なディンプル構造や異なるサイズのディンプル数をまとめた要約版となっている。また、彼のコンピューターのスクリーン上にはゴルフボールが3Dで映し出されていて、特定のエリアのディンプルを拡大することもできる。

今年、NEW プロV1・プロV1xは、3代振りに新たなディンプルパターンを採用した。簡単に言えば、この進化で、両モデルともに空気力学の原理を応用した製品性能の均一性を次のレベルへとステップアップさせた。

ジョーダン・スピースが、初めてNEW プロV1xで試合に臨んだオーストラリアオープン優勝後の昨年11月に語ってくれた。「飛びがよくなっていることに、すぐに気づいたよ。横風でもラインを保っていた。ラインを外したと思われたショットが2、3回あったが、フェアウェイやグリーンの近くに留まってくれた。おかげで、トラブルにならずパーセーブできたんだ」

同じく、オーストラリアオープンで初めて2017年モデルのプロV1を試合で使用したアダム・スコットは、そのプロ・アマラウンドで、フォローの状態でロイヤルシドニーGCの15番ホールを360ヤード飛ばした。

「やや高めに打てたとは思ったけど、こんなに遠くまで飛ぶなんて驚いたよ」と彼は言う。

それから3つ目のホールにあたる18番ホールではアゲンストになったが、スコットはフェアウェイのど真ん中を295ヤード飛ばした。

「よりフラットなボールの飛びで、風がボールを避けていた。パフォーマンスに優れたボールで、思い通りにきちんとコントロールできるし、こういうスイングをしたらこう飛ぶというのがわかるんだ。そういう気持ちでティーグラウンドに立てるのはいいよね」

タイトリストによる「検証済み」の定義がどのようなものか、さらなる調査が必要ではあるが、マッドソンの概算によると、2017年モデルのプロV1・プロV1xの開発過程で80種類以上のディンプルパターンを検証している。

ホッジいわく、「マイクをかき立てるのは、自分の基準を超えなければならないということ。その基準がプロV1・プロV1xだ。真に目に見える進化をもたらすことができなければ、私たちはどんな製品も発表しない。そして、それには時間がかかる。“より良いもの”には時間が必要なんだ」

それは、パソコンの前に座ることから始まる。マッドソンは、それぞれのモデルの全体的な設計をしっかりと配慮しつつ、何年も積み重ねてきた知識とデータを生かして、CAD(コンピュータ支援設計)を用いたモデリングにより、レイアウトやディンプルのサイズを調整している。マッドソンいわく「2012年から取り組んでいるいくつかの実験的パターン」が、最終的に使えるパターンの着地点となり、次に、そのパターンを使ってパターンの“系統”を作っていく。同じ系統のパターンはいずれも、同じレイアウトとディンプルサイズだが、ディンプルの深さやエッジの角度などが異なる。

そして、ボールの設計図がタイトリスト ツーリング部門に送られる。ディンプルの金型を作る部門だ。この工程は、タイトリストの本社から車で少し行ったところにある看板もない建物の中で始まる。飛び散る火花、金属の焼ける臭いに囲まれながら、ここでタイトリストは1つ1つのゴルフボールの金型を成形し、その型はプロV1・プロV1xのウレタン・エラストマー・カバーやディンプルパターンの製作だけでなく、研究開発部門が設計したプロトタイプの作成にも使われる。

「研究開発部門の自分のデスクにいながら、CADで新しいパターンを考案して、その先へファイルを送ると、20分後には技術者たちがホブを作り始めている」とマッドソンは言う。

「ホブ」とは、金型を作る際に使われる機械設備のこと。ホブもまた、すべて最新の機械技術を駆使して社内で作られる。1つのホブを作るのに、24時間かかる。

「タイトリストの部門には、物を作るための物を作るという仕事がいくつもある。ボールプラントIIIだけで、プロV1・プロV1xのウレタン成形ラインに供給するゴルフボールの金型が何万個も必要になる。そして、すべて同じものでなければならない。工程のすべてのパートを管理できなければ、そこで製造された製品の均一性が常に疑わしくなる」と言うワデル。

プロトタイプは、これらのテストに合格して初めて、白い箱に近づくことができる。

プロトタイプは一度作られると、タイトリストのカスタムゴルフボール施設内の奥にある「ITR」(テスト用屋内練習場)で、一連のさまざまな空気力学テストを受ける。地図がないとたどり着けないようなところだ。これらのテストが終わったら、同じテストをもう2回繰り返し行う。

ホッジいわく、「屋内でたくさんのテストを行うことができるものの、ゴルフは外で行うスポーツなので屋外でも検証しなければならない。最初のスクリーニング工程を終えたら、私たちの考えが本当に確かなものなのかさらに掘り下げて行き、何度も繰り返しこれらのデザインと向き合う。何かを思いつくと、他の部門が作業しているさまざまな構造と組み合わせてから屋外に持ち出す」

「屋外」は、ITRからすぐの所にあるタイトリストのマンチェスターレーンテスト施設や、カリフォルニア州のタイトリスト・パフォーマンス・インスティチュート(TPI)で始まる。ここでは、ロボットのゴルファーが各プロトタイプをテストし、非常に正確な計測が行われる。そのスイングはどんなに上手なゴルファーでも真似できないほど完全に一定であり、ボールの打ち出しの差による可変的要素は完全に取り除かれる。ボールのパフォーマンスの違いそのものに基づいた結果が導き出されるのだ。プロトタイプは、これらのテストに合格して初めて、白い箱に近づくことができ、人間によるテストへと進むことになる。

GAME CHANGER

試合にもたらした大きな変革

TPCサマーリンのゴルフ練習場は、16年以上前に開催された2000年インベンシスクラシックatラスベガスのときと、さほど変わっていない。2000年10月9日月曜日、ここで、初めてPGAツアー選手が白い箱に入ったプロV1の初代モデルを試合で使用した。

この大会に向けて数カ月間、タイトリストのゴルフボール研究開発、リーダーシップ、そしてエグゼクティブの各チームは、後に「100人の行進」として知られるようになる、少なくとも100名のツアープロにプロV1をテストしてもらうことを目的とした活動を行った。チームスタッフは、トーナメントの練習ラウンドで多くの選手と共に歩き、選手たちの現行使用モデル(ほとんどがタイトリストのProfessinonalまたはTour Balata)と打ち比べてもらい、そのフィードバックを求めた。

このテストは手応えのあるものであったが、タイトリスト本社内での期待は依然として控えめだった。タイトリスト ツアープロモーションの上席副社長であるマック・フリッツは、インベンシスクラシックで全米ゴルフ協会の公認球リストに加わる予定になっているプロV1を、同大会用のゴルフボールとして発注する任務を負っていた。フリッツは、プロV1を約60ダース注文することにした。20~25名の選手がすぐに新しいボールに切り替えるだろうと予測していたのだ。

今日まで、PGAツアーにおいて使用ギアの変更がこれほどまでに起こった大会はない。

「変更するのは50%くらいだろうと思っていたが外れた」とフリッツ。ラスベガスでは火曜日の午後までに噂が広がるものの、問題はフリッツが持っている在庫数だ。

「選手たちがロッカールームにやってきて言うんだ。『やあ、今週は絶対にプロV1でプレーするよ』ってね。だから、僕も『わかった。ちょっと待って』と言って、すでにダース箱を渡していた他の2名の選手のところに行って、スリーブを分けてもらった。つまり、半分しかボールが入っていない箱で第1ホールのティーショットを打つことになった選手がいたんだ」とフリッツは話す。

さすがにフリッツは、宝物をしっかりと守ったデービス・ラブ3世からは分けてもらわなかった。ラブが言うには「覚えているよ。他のブランドを使っている選手の1人が、練習場で僕のバッグからプロV1を盗もうとしたんだ。プロV1は、ものすごい評判になっていたからね」

初代プロV1のデビュー

その約3カ月前、フリッツはスーツケースに12球のプロトタイプが入った白い箱を1つ入れて、飛行機に乗った。頭の中では、「12球すべて持って帰ってくれよ」というゴルフボール研究開発チームの正直な願いが響いていた。フリッツは、フォーディー・ピッツを含むゴルフボール研究開発チームのスタッフ数名とともにジョージア州のシーアイランドに出向き、ラブに新しいボールを紹介して、じっくりオンコーステストを行う予定だった。

フリッツは、ラブの自宅に近いセント・シモンズ・アイランドのフレデリカGCでラブと落ち合った。ラブは、スタッフたちをコースの真ん中へと案内し、グリーン周辺で止まりながら、ショートゲームのショット、特にラブが得意なフロップショットでテストした。最終的に、彼らはティーから約340ヤードの位置にクロス状の溝を擁するホールにいた。フリッツは、ティーから約300ヤード先のフェアウェイの端まで歩き、ピッツはラブと共にティーに残った。ラブは、タイトリストの975Dドライバー(ロフト角6.5º)をバッグから取り出した。

「フォーディーには、デービスが現行ボールのタイトリストProfessionalを打ったときには右手を挙げ、プロV1を打ったときには左手を挙げるように言ってあった。プロV1がフェアウェイの端に立つ僕の足元に転がってきたのを覚えているよ。Professionalは、そこまで来なかった」とフィッツは言う。

かすかな微風の中でのショットだったため、ラブはボールを低めにティーアップして、「風切るショット」を打った。ラブがProfessionalで打つときによくやるタイプのショットで、ティーショットの飛距離を最大限に伸ばすためにスピン量を減らすのだ。

それぞれのボールで6回ずつ打った後、ピッツはラブにプロV1を「高めにティーアップして打ち上げてみてほしい」と言った。ピッツが空に向かって左手を挙げると、プロV1がフリッツの頭上を飛び、溝に落ちるのを見た。溝のそばに来たラブは、プロV1初のロストボールになろうとしているボールを見つけようと泥の中を探った。

フリッツは、11個のゴルフボールを持ち帰った。翌日、ラブは息子のドリュと一緒に溝に戻り、12個目を探し続けた。

「全員が、そのボールを探していた。そこにあるのはわかっていたし、僕たちもそれを試してみたかったらね。本当に楽しい時間だったよ。自分のプレーを変えてくれるものは、いつだってワクワクするものだろ?」とラブは語る。

3カ月後、ラスベガスでプロV1がデビューした際、ラブはすぐにプレーでプロV1を使用した47名の選手のうちの1人であり、フリッツは限りある在庫を最大限に活用した。今日まで、PGAツアーにおいて使用ギアの変更がこれほどまでに起こった大会はない。

THAT’S DIFFERENT

違いを実感

2016年シュライナーズ・ホスピタルズ・フォー・チルドレン・オープンの水曜午前7時。まもなくプロ・アマトーナメントが始まろうとしていた。ジミー・ウォーカーのキャディー、アンディ・サンダースは、10番ホールのティーに近づき、背負ってきたスタッフバッグを地面に置いた。サイドポケットには、2017年モデルのプロV1xの白いスリーブが数箱入っている。

その前日、フォーディー・ピッツは、ウォーカーと共にコースに出て、最終プロトタイプで最初のトライアルを行った。1年以上、テストとフィードバックを繰り返し、名前を伏せた何百球ものプロトタイプを打って完成したこのボールには、おなじみのタイトリストロゴとプレーナンバー、プロV1xのサイドスタンプが印字されている。数ホール回り、パー5の5番ホールでの2打目で約12フィートまで寄せた後、ウォーカーはピッツの方を見て頷き、木曜の試合でこのボールを使うことを決めた。

同じ頃、ラスベガス・ストリップの反対側へ約32kmの街では、ひまさえあればゴルフをしている金融サービス勤務のベン・クラボーが自宅のポストをのぞき、ちょうどゴルフボールのスリーブ箱のサイズほどの小さな段ボール箱を見つけていた。箱の中には白いシンプルなスリーブ。黒いプレーナンバーと「TEST」のサイドスタンプが押された3つのタイトリストゴルフボールが入っていた。「あなたが日頃最もよく使うゴルフボールと一緒にこのゴルフボールをテストしてください」というタイトリスト研究開発部門からのメッセージもあった。

昨年11月、世界各国にいる8万人以上のTEAM TITLEISTメンバーが、同じような小包と手紙を受け取った。手紙には、テストの明確な目的を明かしてはいなかったが、他のテスト参加者の多くがそうだったように、クラボーもPGAツアーでの反応と何ら変わりはなかった。2017年モデルの新しいプロV1・プロV1xの最終評価プロセスが始まった。

翌日、クラボーは、フーバーダムからそう離れていないラスベガス郊外にあるボルダー・クリークGCの駐車場に向かった。クラブをカートに乗せると、練習場でボールを数個打った。その後、このクラブにある3つのコースのうちの1つ「エルドラドバレー」コースで最初のティーショットを打ってみた。

「あの飛距離には驚いた。違いを実感したよ」

TEAM TITLEIST会員 ベン・クラボー

パー5の1番ホールで、クラボーが3番ウッドで打ったその日最初の本格的なショットは、予想以上に遠くへ飛び、ちょうどグリーン手前で止まった。「本当に275ヤード飛んだのか?」とフェアウェイを振り返って見るクラボー。クラボーは、プロV1プロトタイプでプレーし、バーディーを取った。その後、パー3の7番ホールでややアゲンストの中、ティーショットを打つと、クラボーは即座に頭を振って「短いな」と言った。しかし、ボールは飛び続け、グリーン右横のバンカーも越えて、ピンから10ヤードのショートラフに落ちた。

「あの飛距離には驚いた。違いを実感したよ」とクラボーは言う。

SHOW TIME

ついにデビュー

2017年ファーマーズ・インシュランス・オープンの月曜早朝。まだツアー選手は1人も会場に現れていない。選手のロッカールームの隅で、トッド・ハリスがたくさんの箱を仕分けしている。1つの山は、1つ1つの箱に白いテープが貼ってあり、明らかに他とは異なる。

プロV1・プロV1がタイトリスト本社を出発してPGAツアーに向かうときは、特別な包装が施され、白いテープで封印される。ハリスは、白いテープが輸送中に損傷していないか、すべての箱をチェックする。もしも、封が破れていたら、その箱はマサチューセッツに戻る。

数時間後、ビリー・ホーシェルがトーリー・パインズに到着し、ロッカールームで自分の名前の入ったロッカーを探す。ロッカーの中には、ゴルフボールのダース箱が3つ。白いシンプルな箱ではない。ホーシェルは、左手で箱を持ち、iPhoneで写真を撮ると、写真とメッセージをTwitterに投稿した。

2日後、フロリダ州オーランドで開催された2017年PGAマーチャンダイズショー。1,000人以上の観客が集まったオレンジカウンティ・コンベンションセンターのリンダ・チェイピンホールで、タイトリストゴルフボールマーケティングの上席副社長であるマイケル・マホニーが壇上に上がった。

「今日、NEW プロV1・プロV1xの発売に至り、これ以上にない喜びを感じています。これまで、タイトリストが手掛けたゴルフボールの中で、最高のパフォーマンスと最高の進化を遂げたゴルフボールです」とマホニーは語った。

その頃、国内中のゴルフショップで、ゴルファーたちが、初めて陳列棚に登場する新しい2017年モデルのプロV1・プロV1xを探し求めていた。

12球のゴルフボールが詰まった箱。それは、1つの旅の終わりであり、また新たな旅の始まりなのである。